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PBT(ポリブチレンテレフタレート)の試作を検討している方へ【PBTの特徴や試作・成形の代表的な用途を解説します】

PBT(ポリブチレンテレフタレート)はポリエステルの一種であり、機械的性質や耐薬品性に優れた結晶性のポリマーです。

本記事ではポリブチレンテレフタレートの基本情報について解説します。

 

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PBT(ポリブチレンテレフタレート)の略号と名称

  • 略号:PBT(Poly Butylene Terephtalate)
  • 名称:ポリブチレンテレフタレート
  • 呼称:ピービーティー
  • 外観:白色

テレフタル酸またはテレフタル酸ジメチルと、1,4-ブタンジオールを縮合重合させて作られた熱可塑性樹脂。PET(ポリエチレンテレフタレート)のエチレングリコールを1,4-ブタンジオールに置き換えた分子構造を持つ。

 

PBT(ポリブチレンテレフタレート)の概要

ポリブチレンテレフタレートはPBTとも表示される、ポリエステル系エンジニアリングプラスチックです。PBTは機械的性質や耐薬品性に優れた結晶性のポリマーで、結晶性が高いため見た目は半透明になっています

PBT樹脂の価格は比較的安いため、コストパフォーマンスに優れたプラスチックであり、エンジニアリングプラスチックとしては比較的需要の高いものです。

現在では、PBTを繊維として使用した水着や、電気的特性に優れていることから自動車用部品などに数多く活用されています。なお、ガラス繊維を用いることで機械的性質をさらに強化させることができます。

PBT(ポリブチレンテレフタレート)の長所

PBTの長所として以下のような点が挙げられます。一つ一つ見ていきましょう。

  • 機械的性質に優れている
  • 熱的性質に優れている
  • 結晶化速度が速く、成形性に優れている
  • 電気的性質に優れている
  • 吸水率が小さく、高い寸法精度が得られる
  • 耐薬品性に優れている
  • ガラス繊維を用いることで、非常に強靭な樹脂になる

PBTの機械的性質として、引張強さや衝撃強さの数値が高いため強靭なプラスチックだと言えます。耐熱性も高いPBTですが、ガラス繊維を用いた強化タイプのPBTになると機械的性質と耐熱性が飛躍的に向上します。

電気的性質にも優れているPBTは、温度による体積抵抗率の変化が小さく電気部品や自動車部品に活用できます。耐薬品性については、分子の構造上アルカリ性の溶液にはあまり耐性はありませんが、有機溶剤、潤滑油、ガソリンなどには耐性があるプラスチックです。

また、結晶化速度が速いPBTは、射出成形において成形しやすい材料になります。成形サイクルが早くなるほか、吸水性に優れていることからも、高い寸法精度が得られるのもメリットです。

耐候性もプラスチック材料を選択する上で重要な指標となりますが、PBTの耐候性は比較的優れています。

PBT(ポリブチレンテレフタレート)の短所

一方、PBTの短所としては以下のような点が挙げられます。

  • 非強化タイプは荷重たわみ温度が低い
  • 加水分解を起こしやすい
  • 強アルカリ、フェノール類には耐性がない

PBTはガラス繊維を用いない非強化タイプでは、ガラス転移温度が37~53℃です。したがって、荷重たわみ温度が約58℃と低い数値となっており、高温での使用には適していません。

PBTには分子構造のなかにエステル基を持っているために、加水分解を起こしやすいのも欠点と言えます。射出成形をする時には、材料に少しでも水分が残っていると、成形時の温度上昇によって機械的性質が落ちてしまいます。成形前に140℃で4時間以上熱風乾燥させ、材料の中に含まれる水分を取り除くことが大切です。

また、強アルカリ性の溶液やフェノール類、塩素系炭化水素には耐性がありませんので、注意が必要です。

 

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PBT(ポリブチレンテレフタレート)の物性について

 

ここではPBTの物性について解説します。

  単位 ASTM 非強化 ガラスF30%
透明性 不透明
[物理的・機械的性質]
比重 D792 1.30-1.38 1.48-1.53
引張強さ MPa D638 57 96-131
破断時伸び % D638 50-300 2.0-4.0
引張弾性率 MPa D638 1,900-3,000 9,000-10,300
圧縮強さ MPa D695 59-100 125-162
曲げ強さ MPa D790 82-115 152-200
衝撃強さ (アイゾット ノッチ付) J/m D256 37-53 48-85
硬度 (ロックウェル) D785 M68-78 M90
硬度 (ショア) D2240
[熱的性質および成形時の性質]
線膨張率 x10-5/℃ D696 6.0-9.5 2.5
荷重たわみ温度 (1.81MPa) D648 50-85 196-225
成形温度 (射出成形) 220-270 230-280
成形温度 (押出成形)
成形収縮率 % 1.5-2.0 0.2-0.8
[電気的性質]
体積抵抗率 Ω·cm D257 1015-1016 1016
絶縁破壊強さ KV/mm D149 17-22 18-22
誘電率 106Hz D150 3.1-3.3
耐アーク性 sec D495 75-192
[化学的性質および燃焼性・吸水性]
耐酸・耐アルカリ性 D543 侵される 強アルカリに侵される
耐溶剤性 D543 極性溶剤に膨潤 極性溶剤に膨潤
燃焼性 mm/min D635 709
吸水率 重量% D570 0.08-0.09 0.06-0.08

物理的・機械的性質

PBTのアイゾットノッチ付き衝撃強さは非強化タイプで37-53J/mと、プラスチックの中では比較的高い数値であり、エンジニアリングプラスチックに相当します。ただ、PBTの特徴として挙げられるのが、ガラス繊維を用いた強化タイプになると、機械的性質が向上する点です。

強化タイプになると衝撃強さは48-85 J/m、引張強さや圧縮強さ、引張弾性率なども飛躍的に向上します。

化学的性質・燃焼性・吸水性

PBTは酸性による耐性はありますが、アルカリ性の溶液、特に強アルカリには耐性がありません。ガラス繊維の強化タイプの場合には、強アルカリ性の溶液に侵されると引張強さの低下が著しいものになります。

難燃性グレードのPBTがあり、酸素指数にすると約29%になります。吸水率は同じエンジニアリングプラスチックであるポリカーボネートやポリアミドと比較して少ない数値であり、成形後の寸法安定性に特に優れている素材です。

熱的性質・成形時の性質

非強化タイプのPBTは荷重たわみ温度が低いのが欠点ですが、強化タイプのPBTはそれを補い、荷重たわみ温度が飛躍的に向上しています。

成形時の性質として、PBTの射出成形の最適な温度は240~265℃です。樹脂温度が280℃を超えるようになってくると、機械的性質が低下したり焼けを起こしたりします。

金型の温度は、通常60~100℃が適しており、強化タイプのPBTは金型温度が高い方が良いです。

成形収縮率は低いため、成形時の寸法精度は高い傾向にあります。

電気的性質

PBTの体積抵抗率は約1016Ω·cmと、エンジニアリングプラスチックの中でも電気的性質に優れている素材です。強化タイプのPBTは耐電圧の温度依存性が低いため、コネクタなどの電気部品での使用に適しています。

PBT(ポリブチレンテレフタレート)の用途

PBTは機械的性質や耐熱性、電気的性質に優れているほか、成形もしやすいことから特に電気部品や自動車部品での使用に適しています

2020年のデータでは国内のPBT需要量の大半を自動車用部品が占めており、自動車には欠かせないエンジニアリングプラスチックです。

自動車の中でも電装品に多く利用されているのは、PBTの耐熱性や電気的性質に優れている点が評価されているからです。ハーネスコネクタなどの小型部品は寸法精度が要求されるため、成型加工性・寸法安定性のいいPBTが採用される傾向にあります。

PBTが使われる分野と製品に関しては以下の通りです。

電気機器および電子機器関係 コネクタ、スイッチ、絶縁材、端子、ヘアドライヤーのノズル、ヘアカーラーの櫛、マイクロスイッチ部品、マイクロモーターのハウジング、端子、タイマー部品、シェーバー回路、リレー部品
自動車関係 電気コネクタ、ライト部品、ハーネスコネクタ、イグニッションコイル、エアバッグ用通電部品、ギア、ドアロックハウジング、排気関係製品、ワイパーアーム、ドアミラーステイ、ヘッドライトハウジング、サンルーフリム・フレーム
その他の工業関係 光ファイバーケーブルの鞘、シーケンサーハウジング、キーボードのキー、腕時計および時計の部品、カメラ部品
その他の用途 水着、フィルム

 

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