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POM(ポリアセタール)の試作を検討している方へ【POMの特徴や試作・成形の代表的な用途を解説します】

 

POMとはポリアセタールの略称であり、別名ポリオキシメチレンとも呼ばれています。

ポリアセタールは汎用エンジニアリングプラスチックの一種です。エンジニアリングプラスチックとは、機械的性質や耐熱性に優れているプラスチックであり、機械部品などに活用されています。ポリアセタールは5大汎用エンプラの一つと言われています。

ポリアセタールは強靭さと自己潤滑性を持っているため、歯車などの機構部品に使われることが多く、インクジェットプリンターの白いプラスチック製の歯車などがポリアセタールです。

本記事ではポリアセタールの基本情報について解説します。

 

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POM(ポリアセタール)の略号と名称

  • 略号:POM (Polyoxymethylene, Polyacetal)
  • 名称:ポリオキシメチレン樹脂、ポリアセタール樹脂
  • 呼称:ポリアセタールかポムと呼ばれる
  • 外観:白色
  • 化学式:(CH2O)n

ポリアセタールは基本的にホルムアルデヒドのポリマーであるが、分子構造が-CH₂O-の繰り返しになるホモポリマーと、エチレンエキシド構造- CH₂CH₂O-を持つコポリマーとの2種類がある。

POM(ポリアセタール)の長所

ポリアセタールの分子骨格は線状の単純な構造のため結晶化度が高く、強靭なのが特徴の一つです。エンジニアリングプラスチックの中でも機械的性質の剛性や耐衝撃性などがバランスよく優れている素材であり、金属部品の代替品として使用することで、製品の軽量化に貢献できます。

ポリアセタール自体に自己潤滑性があるのも長所と言えます。グリスを塗らなくても滑らかな動きをするのに加えて、摩擦係数が少なく耐摩耗性が高いこともあり、歯車やベアリングとして活躍している素材です。

また、耐疲労性やばね特性にも優れています。プラスチックの持つ引張強さより小さい応力であっても繰り返し応力が発生してしまうと徐々に亀裂が発生しますが、ポリアセタールの耐疲労性はポリアミドやポリカーボネートよりも優れており、ばねや歯車に使用するには最適です。

さらに、ポリアセタールにはクリープが発生しにくいという耐クリープ性があります。クリープの発生程度は、荷重の大きさや時間、温度などの環境によって変化するものではありますが、荷重をかける経過時間に対してポリアセタールは曲がりが少ないという結果もあります。

射出成形をする時に高い寸法精度を求めるには、そのプラスチックの持つ寸法安定性や吸水性、収縮率などを見なければなりません。その点でポリアセタールは成形後の収縮率や寸法安定性が優れているため、射出成形に適した素材と言えるでしょう。

POM(ポリアセタール)の短所

まず、ポリアセタールの短所として挙げられるのが、耐薬品性です。基本的にポリマー鎖末端の解重合を防いだエンドキャップを施したポリアセタールは、熱的・化学的に安定性はありますが、pH値4~9を超える範囲での強酸や塩基などにさらされると、エンドキャップの酢酸エステル基を分解するため、劣化を起こすようになります。

次に耐候性が低い点が短所として挙げられます。ポリアセタールは、屋外や常に直射日光が当たるような場所では、物性が変化したり変色したりするため、屋外での使用には適していません。

また、ポリアセタールは一般的に接着性が低いため、メッキや塗装などがしづらいという欠点もあります。射出成形においては金型との密着性も良くないため、表面に細かなしわを施すようなシボ加工にはあまり向いていない素材です。

 

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POM(ポリアセタール)の物性について

ここではポリアセタールの物性について解説します。

  単位 ASTM ホモポリマー コポリマー ガラスF30%
透明性 半透明-不透明 不透明
[物理的・機械的性質]
比重 D792 1.42 1.41 1.54-1.56
引張強さ MPa D638 67-69 59-67
破断時伸び % D638 25-75 40-75 12
引張弾性率 MPa D638 3100-3600 2800-3200 6200
圧縮強さ MPa D695 108-125 110 125
曲げ強さ MPa D790 94-99 89 74
衝撃強さ (アイゾット ノッチ付) J/m D256 64-123 43-80 43-53
硬度 (ロックウェル) D785 M92-94 M78-90 M90
硬度 (ショア) D2240  
[熱的性質および成形時の性質]
線膨張率 x10-5/℃ D696 10.0-11.3 6.1-8.5 3.3-7.5
荷重たわみ温度 (1.81MPa) D648 124-136 85-121 157
成形温度 (射出成形) 190-240 180-220 180-250
成形温度 (押出成形)
成形収縮率 % 2.0-2.5 2.0 0.9-1.2
[電気的性質]
体積抵抗率 Ω・cm D257 1015 1014 1014
絶縁破壊強さ kV/mm D149 20 (2.29t) 20 (2.29t) 19 (3.18t)
誘電率 106Hz D150 3.7 3.7 4.0
耐アーク性 sec D495 129 240 (燃える) 136
[化学的性質および燃焼性・吸水性]
耐酸・耐アルカリ性 D543 酸化性酸、強アルカリに侵される
耐溶剤性 D543 耐える
燃焼性 mm/min D635 655 655 493
吸水率 (24h) 重量% D570 0.25-0.40 0.20-0.22 0.25

引用:https://www.kda1969.com/materials/pla_mate_pom2.htm

物理的・機械的性質

ポリアセタールは結晶化度が高いため、見た目は半透明か不透明です。機械的性質については全体的にバランスよく優れています。特に圧縮強さについてはプラスチックの中でも優れた数値を示しており、ポリカーボネートやポリアミドなどよりも安定した強さを発揮します。

耐衝撃性も高く、ポリエステル系やビニル系などと比べても優れていると言え、高密度ポリエチレンなどと同等レベルの耐衝撃性があります。

また、先述したようにポリアセタールは耐疲労性と耐摩耗性がどちらも高いため、高負荷の環境下での使用に適しています。

化学的性質・燃焼性・吸水性

ポリアセタールの耐薬品性については、有機溶剤やガソリン、グリス、オイルなどに強い耐性を発揮します。エタノールやトルエン、各種グリスなどに長時間さらされても、物性があまり変化しないという特徴があるため、薬品や油類に接する環境での使用に適しています。

しかし、塩酸や硫酸などの強酸への耐性はありません。

ポリアセタールは分子構造に酸素を持つため、燃焼性は高く、燃えやすい性質があります。吸水性についてはプラスチックの中でも平均的な値であり、ポリアミドなどよりは吸水性が高いですが、高湿環境下でも寸法の変化はほぼありません。

熱的性質・成形時の性質

連続耐熱温度はホモポリマー、コポリマーで約90~105℃、荷重たわみ温度も高い数値であるため、高温の環境下でも機械的強度を保つことができます。

成形収縮率もナイロン66と同じぐらいの数値であるため、成形後の収縮が少なく、高い寸法精度を確保できるでしょう。

さらにポリアセタールの成形温度はエンジニアリングプラスチックの中でも最も低い、200℃前後であることから、成形サイクルも早く、成形のしやすさは抜群です。

電気的性質

ポリアセタールは体積抵抗率について高い値であることから、絶縁性は優れていると言えます。その他の電気的性質もバランスが良いですが、用途として帯電防止や導電性能を施したポリアセタールも存在します。

POM(ポリアセタール)の用途

ポリアセタールは耐疲労性と耐摩耗性に優れているプラスチックであるため、繰り返しの動作が必要な部品に多く使用されています。例えば、インクジェットプリンターの内部にある送り出し用の歯車や自転車のベル、トイレットペーパーのホルダーなどがポリアセタールでできています。また、負荷がかかった状態でも長期にわたって高い機械的性質を保つため、戸車やキャビネットキャスターなどでも活躍しています。

ポリアセタールの自己潤滑性と耐摩耗性を十二分に生かした活用法が、ベアリングです。一般的なベアリングは金属製ですが、その代替品としてポリアセタールが使われ、成形方法としてはインサート成形が採用されています。

インサート成形は、金属と樹脂を一体成形するもので、ポリアセタール製のベアリングを使用することで、軽量化などを図れるのは大きなメリットです。

強酸を除く耐薬品性もあるため、排水口やガソリンタンクのキャップ、洗濯槽といった有機溶剤やガソリンの接触が予想される製品にも使用されています。

参考資料:https://www.m-ep.co.jp/pdf/product/iupital/pom.pdf

 

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