二色成形(ダブルモールド)とは?
私たちの身の回りにはプラスチック製品が数多く存在しており、それらを製造する主な方法として射出成形が使われています。射出成形には様々な技術がありますが、二色成形と呼ばれる技術は付加価値の高い製品を作れるのが特徴です。
例えば、パソコンのキーボードやリモコンなど、今や大量に普及している製品に二色成形は欠かせない技術になっています。
本記事では、二色成形の特徴からメリット、仕組み、活用事例などを詳しく解説します。
目次
二色成形とは
二色成形とは、異なる2種類の材料を組み合わせて、一つの成形品を作り上げる技術のことです。二色成形で使用される樹脂はすべて、熱を加えると軟化し冷却すると固化する特徴を持つ熱可塑性樹脂です。
通常の単色成形では、射出成形機に付いている金型は1つしかありません。しかし、二色成形では金型が2つ取り付けられているため、
ダブルモールド=doublemoldingとも呼ばれます。
二色成形の特徴
二色成形の最大の特徴は、異なる材質同士を成形するため機能性やデザイン性を付加できる点です。1次側樹脂に汎用プラスチックを使い、2次側樹脂に透過性プラスチックを使えばキーボードを光らすことが出来たり、エラストマーを2次側樹脂に使用してグリップ性能を持たせたりできます。
二色成形のもう一つの特徴は、他の成形工法と異なり、金型の180度回転といった工程が加わることです。通常の射出成形では、ホッパーで溶融されたプラスチック材料がスクリューによって押し出され、型締めされた金型のキャビティ部に注入、固化されたあと、型開きをすれば製品を取り出せます。
二色成形では、1次側樹脂を注入する金型と2次側樹脂を注入する金型という、2つの金型が取り付けられており、テーブルを180度回転させて交互にプラスチックを注入することで一体成形を実現しています。
交互とはいえ、ワンショットで一体成形ができるので、大量生産に対応することが可能です。
ただし、二色成形を行う場合には緻密な設計が必要であり、1次側・2次側樹脂ともに肉厚調整や金型の温度コントロール、流体力学への理解といった知識とノウハウが欠かせません。
二色成形は材料の選定が重要
二色成形は2種類のプラスチックを結合させるため、材料同士の相性を考えることが重要となります。仮に相性・密着性の良くない材料同士を成形したら、簡単に剝離してしまい製品としての信頼性を保つことができません。
プラスチックやエラストマー同士を接合できる仕組みは、分子レベルで行われる化学的結合です。
プラスチックには結晶性樹脂と非晶性樹脂の2種類があります。プラスチックは高分子が長い紐状になって絡みあっていますが、結晶性樹脂は分子が規則性のある並びをしている「結晶性」を持ちます。一方の非晶性樹脂は分子が規則的ではなく、ランダムに並ぶ構造を持っているのが特徴です。
二色成形では、PC(ポリカーボネート)やPVC(ポリ塩化ビニル)などの非晶性樹脂同士であれば密着性が良くなります。しかし、PA(ポリアミド)やPE(ポリエチレン)などの結晶性樹脂同士であったり、結晶性樹脂と非晶性樹脂であったりした場合は、密着性が良くなく簡単に剝離してしまいます。
ただし、密着性の高くない材料同士を組み合わせるために、機械的に結合することが可能です。その場合には、フックや溝、アンカー形状、アンダーカットなどを施して接地面積を増やしたり、1次側樹脂を2次側樹脂で包み込んだりして機械的に結合させます。
二色成形のメリット
二色成形は材料選びや金型の温度コントロールなどノウハウが必要である反面、単色成形では得られないメリットが存在します。では、製品設計の段階で二色成形を採用することにどのようなメリットがあるのでしょうか。
・「高付加価値」
単色成形では実現できない高品質で、耐摩耗や耐久性などの機能特性を保有した製品の開発が可能です。例えば、1次側樹脂に硬質樹脂を、2次側樹脂に軟質のエラストマーを使用することでグリップ性能や衝撃吸収、シーリング効果を加えることができます。繰り返し使えるような耐久性を持ったヒンジ付きの開閉キャップなど、二色成形で実現できる付加価値は様々なものがあります。
また、収縮率の大きい材料や厚肉製品などで高い寸法精度を求めたい時には、二色成形で同じ樹脂を二重に注入することで、ヒケなどの不良が発生することを防ぐ効果もあります。
・「工数・コスト削減」
単色成形で作られた複数の部品を組み立てる場合には、その分の組み立て工数が必要となります。しかし、二色成形によりワンサイクルで組み合わせてしまえば、組み立て工数は削減することができます。製造にかかる時間を削減することができると、それだけリードタイム短縮にも繋がるのもメリットの一つです。
さらに、部品点数が減ることで仕掛け品や原材料の在庫管理の手間が省けるため、二色成形によってもたらされるコスト削減は多大なものがあります。
・「品質安定・パーツの小型化」
複数部品の場合の必要な形状を削除できるので、二色成形ではパーツ及び製品の小型化が実現できます。
また、後工程で人の手などで組み立てをする場合と比べて、二色成形で一体成形した方がプラスチックやエラストマー同士の密着性が良く、簡単には剝離しません。そのため、製品としての機能性が高まり、信頼度も向上します。さらに、組み立て工程で発生する不良品などもなくすことができるので、品質の安定にもつながります。
二色成形の仕組みと工程
二色成形の工程は基本的に自動化されているため、大量生産と安定した生産が可能です。射出成形機にはノズルが2本、そしてシリンダーがあり、1次側樹脂と2次側樹脂を順番に金型に射出充填をして、2種の部品を作成することができます。
二色成形が出来上がるまでの工程
射出成形機には通常、金型が2つ取り付けられており、金型を180度回転させて交互に射出していくのが一般的な工法です。
- 1次側樹脂を射出する側をA、2次側樹脂を射出する側をBとすると、まずAの金型を型締めして、樹脂を充填。
- 型を開いた後、製品を保持したままAの金型を180度回転させてBの金型と入れ替える。すると、1次側Aは製品が何もなく、2次側Bは製品がある状態になる。
- 両側の金型を型締めし、Aの金型には1次側樹脂を充填。Bの金型には2次側樹脂を充填して2種類のプラスチックを組み合わせる。
- 型開きをして、Bの金型から製品を取り出す。またA側の金型を180度回転させて同じ工程を繰り返すと、ワンサイクルで成形品が出来上がる。
二色成形の活用事例
消費者向けの製品から自動車部品や電気部品に至るまで、産業界で広く使用されている二色成形。特に医療分野では厳しい品質基準と要件が求められるため、二色成形は欠かせません。通常、部品を組み合わせるとわずかながら隙間が出来てしまいますが、二色成形では密着性が良ければ継ぎ目なく組み合わせることができます。
分野別の製品例
電化製品分野
パソコンのキートップやウェアラブルバンドなどに使われています。バンドには、軟質エラストマー同士を組み合わせることで、機能性とデザイン性を持たせることができます。
自動車部品分野
車載の内装部品などに使われています。PCとABSの2色成形後、ABSの部分にだけメッキ加飾することができ、デザイン性とともに静音性なども備えています。また、文字の部分に透光性の材料を使用することで、光らせることも可能です。
医療分野
医療分野としては耐薬品性や人体に影響を及ぼさないように、チューブやシリンジといった医療機器に二色成形が使われています。
PlaQuickにおける二色成形
PlaQuickで二色成形を行う場合は、2回に分けて成形を行います。
1次成形で内側の耐熱温度の高いものを成形し、その後インサート成形のような形で成形品を設置して2次成形という形です。
そのため、2つの樹脂に溶融温度の差が必要です。金型の加工費は2型分かかります。
厳密にいえば2色成形とは異なりますが、試作の段階では要求を満たすことが可能です。
まとめ
二色成形は、異なる材質同士の成形が可能なため、製品価値の向上が見込める上に、量産ができる成形方法です。また、消費者向け製品から電化製品や医療用の部品まで、幅広い分野で使用されています。
ただし、材料の選定が重要となるため、二色成形を検討する場合には知識やノウハウを持った業者へ依頼することが大切です。
二色成形の試作をお考えの方は、PlaQuickにお気軽に問い合わせください。